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「本を書きたい」人が読むブログ
「本を書きたい!」「本を出版するには?」と思っても、何からはじめたらいいか、わからないことがワカラナイ――という方も多いでしょう。当コーナーでは、小説を書くうえでのポイントや、読み応えのあるエッセイの文章構成、評価される詩の共通点などを、具体的な事例とともに解説。
本になる前の原稿を数多く読んできた文芸社ならではの視点で、あなたの一文が作品に生まれ変わるまでのお手伝いをいたします。

「詩の本を出版する」ための唯一の近道

2016年04月12日 【詩を書く】

まずは自分のために詩を書く

小説を書く人でも、エッセイを書く人でも、「詩」を書いたことが一度もない、という人は少ないのではないでしょうか。“詩的な短い文章”であれば、ふだんは文芸活動をしていない人でも、それなりの数の人が書いたことがあるかもしれません。そのくらい、詩作とは身近なものと考えていいのでしょう。
詩とは自分の心のうちを表現した象徴のようなものであり、できあがったものを他の人が「詩」と見なすかどうかはまた別です。だから詩作の第一義とは、自分のために詩を書く――それでいいのです。

価値観が同じ身近な人にあてて書く

書いた詩に、あなた自身が癒されたり鼓舞されたりと心動かされたならば、その詩はきっと、あなたと同じ価値観をもつ身近な人の心だって揺さぶることでしょう。
詩作の次のステップとしては、家族、恋人、友人……ソウルメイトと呼べるような価値観を共有する人を想像し、最初に書いた詩を見直してみてください。そうして少し手を入れた詩は、語り手の存在感に奥行きが生まれ、語られる対象にも幅ができ、作品としての「力」に、方向性と量とが備わったものになるはずです。

詩の最終テーマ「価値観の異なる人の感情を引き出す」

似た思いをもつ読み手に詩の味わいを共有してもらうことは、ある意味容易です。ゆえに「詩を書く」という次元でいえばそこで留まってもかまいません。けれど、いくらかでも詩を書き溜めたとしたら、「自分の詩集を……」と夢みるのは当然です。そしてその瞬間、詩人であるあなたの前にはひとつの大きな壁がそびえ立ちます。
自作の詩を本にして出版することは、出会ったこともない見ず知らずの人に手紙を書くようなものです。しかも読んだその人を感動させなければなりません。それを可能にするのが、詩の技術です。その一例をご紹介しましょう。

まずは、下の3つの文章を読んでみてください。それぞれ「花」「炭酸飲料」「カレンダー」のキーワードを使って「初恋」を表現したものです。

1.花のような初恋の思い出は麗しく、胸の奥で密やかな微香を漂わせている。
2.初恋は炭酸飲料のように爽やかだけれど、ほんの少し刺激もあって痛くて切ない。
3.去年のカレンダーのごとく、初恋はあっけなく用済みになったのだった。

つぎに質問です。上の3つの文章は、「詩」として読むことができましたか? それとも、ふつうの文章のように感じられましたか?

いずれも「花」「炭酸飲料」「カレンダー」のキーワードを「初恋」の比喩(=たとえ)として使っていますが、どれも詩の一節というより、小説やエッセイに見られる一文のような感じがしたのではないでしょうか。

なぜでしょう……?
理由は、3つの比喩に共通する点に着目すれば見えてくるでしょうか。

これらに共通するもの、それは直喩(ちょくゆ・「〜のような」「〜のごとく」)を使っているということです。直喩を使った文章は、説明的、散文(ふつうの文章)的な印象となる傾向があります。

というわけで上記例1を詩的にアレンジしてみましょう。

初恋の思い出は胸の奥で密やかな微香を漂わせている
それは私だけが知る花の残り香

歌謡曲の歌詞にも似た詩情が生まれたでしょうか。読んだあと味は、前の例文とはずいぶん違ったものになりました。変化させたのは以下の3点です。

・直喩を隠喩(いんゆ・特徴をストレートにたとえる)にした
・末尾を体言止め(文章を名詞で終わらせること)で〆た
・「私だけが知る花」と、打ち明けられなかった恋であったことも暗示した

こんな具合に、詩化するための技術が盛り込まれた一篇となりました。とくに隠喩の手法は、文章を直感的な表現へと劇的に変化させる力をもっていますので、この記事を読まれたのをきっかけに覚えておいて損はないでしょう。

もちろん、詩作において絶対的な正解などありません。しかし、“何を表現するか”と同時に“いかに表現するか”を考えることで、作品がもつテーマやメッセージを強いインパクトで読者に届けられるのは事実です。そのための方法論として「詩の技術」をマスターすれば、「詩」はより「作品」としての実力を備えることでしょう。

ちなみに、(誰もが知りたい?)技術向上の近道は、ズバリあります。それは、書いたら人に読んでもらう、読んでもらったら感想を聞いて書き直してみる、という方法。そんなふうに、トレーナーを伴侶にするパンプアップ的トレーニングは文芸の道でも最良なのです。

※この記事は弊社運営の【気軽にSite 執筆・出版の応援ひろば】掲載の記事を再構成して作成しています。