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「本を書きたい」人が読むブログ
「本を書きたい!」「本を出版するには?」と思っても、何からはじめたらいいか、わからないことがワカラナイ――という方も多いでしょう。当コーナーでは、小説を書くうえでのポイントや、読み応えのあるエッセイの文章構成、評価される詩の共通点などを、具体的な事例とともに解説。
本になる前の原稿を数多く読んできた文芸社ならではの視点で、あなたの一文が作品に生まれ変わるまでのお手伝いをいたします。

「作家になる!」ために必要なマーケティングの意識

2016年05月20日 【作家になる】

あなたの作品が読まれない理由

ゼッタイおもしろいはず! と意気揚々と自分の書いた作品をネット上に公開したものの、どうにも反応が鈍い。そんな経験のある人は決して少なくないはずです。かく言う筆者も、こうした記事を書いてはアクセス数を確認し、一喜一憂してみたり悶々と日々を過ごしてみたりと、皆さま方と同じような心境にあります。
話は戻って、じっさいに文章力は一定の水準を超えているし、人物造形や物語の完成度も高いのに、結果的に作品に対する反響が薄いというのはよくあることです。というより、そのほうが多いのが現実というものでしょうか。理由はさまざまあるでしょうが、そのひとつとして「読者目線で作品を考えていない」ことが考えられます。

マーケティングから考える創作術

読者目線で作品を考える、とはどういうことでしょうか。たとえば、とある家電メーカーが、機能的にもデザイン的にも優れた電化製品を誕生させたとします。他社の追随を許さないほどに、企業努力と開発技術の結晶として形となった製品です。ところが、その商品のネーミングや広告イメージがひどくセンスのないものだったらどうでしょうか。まずいマーケティングにより商品それ自体がもつ価値は損なわれ、結果的に消費者の購買意欲までもがそがれてしまうことでしょう。商品単体であれば満点の100であった価値は目減りし、悲しいかな市場では60や70のクラスのアイテムと位置づけられてしまうのです。これでは開発や生産の部門は泣いてしまいますね――と人ごとのように同情してばかりもいられません。もし、あなたの作品に対する世間の反応が鈍いのであれば、この会社のマーケティング部門と同様の過ちを犯しているかもしれないからです。

自分の感性を少し脇に置いておく

とはいえ、Webで公開する自分の作品のプロモーションに、大手広告代理店を起用するなど高額の宣伝費をかけられるわけもありません。そもそも収益性が未知の状態では、多くの人が広告費の概念すら頭に思い浮かばないことでしょう。だから、やはり作家はどこまでもセルフプロデュース。「書くこと」においては腕に覚えがある方も多いでしょうから、当然のこと、自身の作品に対しても、読者の目を惹く工夫をとめどなく仕掛けていくことに躊躇い(ためらい)はないでしょう。その初手となるのが「作品タイトル」。作品の内容を世界中の誰よりも熟知し、作品愛だって溢れているはずのあなたであれば、きっと「これしかない!」という作品名が思い浮かぶに違いありません。でも、ここではその熱い思いは少し脇に置いてみることをオススメします。なぜでしょう?

作家セルフプロデュースは「分業制」で

先の家電メーカーの例では、開発部や生産部がマーケティングを担う部門に泣かされてしまいました。が、それでも、世の中の多くのメーカーで「製作する側」と「広告する側」とで部門がわかれているのには、合理的な理由があるはず。「それぞれに専門性の高い業務だから」に基づいての分業なのでしょう。じつはこの分業スタイル、作家もまたそれを頭のなかに仮想で展開することで、「読者目線で作品を考える」ことが可能となるのです。

『池袋ウエストゲートパーク』で大成功をおさめ、その後、直木賞も受賞した小説家・石田衣良氏は、小説家デビュー前からすでに名うてのフリーのコピーライターでした。こうした場合、多くの人はコピーライターとして培った技術が、小説を書くうえでもおおいに役に立つだろうと思うものです。しかし石田氏曰く、方法論がまったく違うとのこと。コピーライターの経歴の下地に被さるようにして、小説家のキャリアがのっかっているわけではないそうなのです。そして、本の「出版」に関しコピーライターの技術が役立っている領域があるとすれば、それは唯一、本に巻く帯のキャッチコピーを書くときだけ、なのだそうです。「分業」のそれぞれを極めた人物のこうした言葉ほど、「創作」と「広告」との違いを明白に示すものはないと思いませんか。

自分の作品にとって「これしかない!」と思えるタイトルが思い浮かんだとしても、それで即決するのではなく、ぐっと踏みとどまって、「読者はどう思うだろうか?」と脳内の別の場所を使って再考を繰り返すことが、この仮想分業スタイルでは重要な業務フローとなるようです。どんなに語呂がよくても、どんなに作品世界を的確に象徴していても、どんなにクールに思えても、読者が「表紙をめくってみたい」と感じなければ「0点」なのだと、そのぐらい厳しい自制心をもって考え抜かねばなりません。そして最後に、身近な人、もっといえば作品を未読の人に、作品タイトル案に対する感想を求めてみることも「響くタイトル」を考えるうえで有効な手立てとなるでしょう。