熱帯雨林のはざまにて
大正から昭和初期、
マレーのゴム農園の支配人に嫁いだ女性の若き日を描いた小説。
大正末期、蝶子は18歳の若さで、兄の友人、釘宮に嫁いだ。マレーのゴム農園での生活。彼女は支配人の妻の役目を懸命に果たす。年が経て、子供の教育の悩みと共に心に重くあるのは、女衒に売られ遊女屋にいるらしい親友キヌのことであった。現地の日本人進出に対する敵意と軋轢、娼館街の悲惨な現実と廃娼運動をする救世軍など、当時の空気を色濃く印象づける味わい深い作品である。