それは「いらない」で始まった
いらないと言われ、
人生を大事に前向きに突っ張ってきた女性のオートフィクション。
八畳くらいの和室の真ん中に椅子がひとつ。その椅子には中学生か、もう少し下くらいの女の子が、椅子にまたがって背もたれに腕と顎を置いていた。その傍らでは中年の男女が言い争っている。男は女の子の父親であろうか? とすれば女は母親だと推測できる。「連れていけ」と男は言う。「いらない」と女は叫ぶ。──そうか、この言葉が耳について離れないのだ。