文芸社社員が選ぶ、私の本棚 文芸社社員が選ぶ、私の本棚

文芸社25年の歴史上、エポックメイキングな意味合いをもつ5作品を社員の言葉でご紹介します。
幅広いラインナップと、個々のタイトルがたたえる奥深さ、いつの時代も色あせない普遍性が文芸社作品の最大の魅力です。

『自分の説明書』シリーズ

初版1000部の自費出版作品『B型自分の説明書』が大進撃の口火を切る。
日本出版史に燦然と輝くシリーズ累計638万部突破のメガヒット記録を樹立!

B型限定の説明書って、なんだ???──もう14年も前のことなのに、一風変わったタイトルの原稿に目を通したときの気持ちを、いまでも鮮明に覚えています。たとえば、こんな文章があります。【右と言われれば左と言う。それが基本】。思わず「膝ポン!」です。短文に凝縮されたB型ならではの思考や感情が、たまらなくおかしく、切ない。直感的に、編集担当者はB型がいい、というより他の血液型の担当者ではだめだと思いました。B型でなくては、B型の“ヘンなところ”が杭を打たれるように均一化され、お行儀のよい本になってしまいかねない、変な言い方ですが、ヘンなまま出したほうがB型には受けるはず……という同胞への根拠のないシンパシーが的中しました。山形県のB型の書店員さんが火付け役となってくださり、その後に刊行された3冊と合わせ、あれよあれよという間に社会現象に。ゲームなどの関連商品が数多く発売されたほか、4カ国語に翻訳されました。

壁谷(本書編集担当)

小坂流加作品

第6回静岡書店大賞「映像化したい文庫部門」の大賞受賞作。
およそ4年のときを経て、ついに映画化決定。日本中が涙で濡れる日は近い!

著者である小坂流加さんは、『余命10年』改稿直後に病状が悪化し逝去されました。私は、お仕事の上で小坂さんのご家族に何度もお会いする機会をいただいてきました。ご本人亡きあと、ご家族はさまざまな思いを抱えながら、それでも懸命に生きていらっしゃいます。そうした姿を目の当たりにするにつれ、この『余命10年』という小説は主人公が絶命するまでを描くことで、「生き抜く」ことの大切さを伝えようとしたのだと確信をもって感じるようになりました。本作はありがたいことに映画化も決定しました。映画制作にあたっては、作品の真の魅力に惹き寄せられた本当に多くの方々が集まってくださっています。小坂さんの作品は、小説の枠を超えてこれからもっともっと人の心を動かしていくはずです。今後そうしたすべてを、流加さんに素敵なニュースとしてお伝えできますように──。

結城(広報)

早瀬律子『読みテク』シリーズ

発売から10年以上経過した現在も、変わらず受験生に愛される必携書。
シーズンとなると着実なセールスを叩き出す“受験バイブル”は全6タイトル!

第一作が堅調に版を重ねていたため、次作の相談に伺った際に出てきたのが、この『中学入試を制する国語の「読みテク」トレーニング』(『説明文・論説文』『物語文』『随筆文』)の構想です。その構想を簡潔にいえば「読解問題にも解き方の法則がある。それを身につけてもらう本をつくる」ということ。読解問題を解くのに必要なのは、文章を情報として正しく読み取り、要点をとらえる「情報処理能力」です。この処理能力は全教科に通じており、合格を勝ち取るために不可欠なものだといいます。ちなみに、読書は楽しむことが目的となりやすく、読解問題の読み方とは異なるため、受験対策の観点からはあまり効果的とはいえないそうです。同じ本づくりとはいえ、話が受験となると私はプロではありません。その違いを見せつけられた思いでした。「うちの子はたくさん本を読んでいるから国語は大丈夫」と思っている親御さんにこそ手に取ってほしいシリーズです。

壁谷(本書編集担当)

『それからの三国志』シリーズ

大人気の王道ジャンル「三国志」に一石を投じた異色シリーズ。
著者独自の研究を作品に昇華し、初版800部から20万部を突破!

「三国志」といえば定番中の定番の歴史的題材です。そんな、ある意味で出尽くした感もある三国志を描いた自費出版作品が、初版1000部にも満たないところからなぜ20万部を超えるまでのヒットを飛ばせたのか。それは、ド定番の三国志にも人跡未踏の領域があると見極め、そこを丁寧に描き充分なリアリティを読者に示せたからなのでしょう。そんな理由のあとづけは簡単ではありますが、この作品がなした偉業は、セールスの面だけでなく、このようにテーマに対する目の向け方や切り口の妙の重要性を示したところにあるのではないでしょうか。たとえ誰もが毎日目にするような石ころだとしても、実際に手に取り、見る角度や光を当てる角度を変えてみれば、また新たな発見があるかもしれない。これは小説ジャンルだけでなく、日常をテーマに描くエッセイを書く際にも大切な姿勢だと教えてくれるようです。

岩本(販売)

『大空への旅立ち』

日本テレビ系列『24時間テレビ36「愛は地球を救う」』にてドラマ化。
『今日の日はさようなら』として題された本作は、驚異の視聴率23.4%を記録!

文芸社の特色として、個人やそれを取り巻く家族に極限まで寄ったノンフィクション作品を数多く刊行していることが挙げられます。ドキュメンタリー番組に取り上げられることも多く、日テレ系24時間テレビでは過去に通算4度、当社作品が番組内のドラマ原作として扱われました。幸和也さんの『大空への旅立ち がんと闘いながらも夢見ていた未来』もそのひとつで、嵐の大野智さんを主演にドラマ化され驚きの視聴率を叩き出しました。こうした話題は作品への大きな評価であることに違いなく、その成果を喜ばしく受け止めるのですが、作品が世に誕生するに至った経緯を顧みると、やはり思いは自然と亡き作者、ご遺族へと向かっていくものです。本作は、私たち文芸社の仕事が、社会のなかでどのような意味や価値をもつものなのか、また、もたせることができるものなのか、それをいつまでも問いかけてくる大事な一冊となっています。
日テレ24時間テレビ ドラマスペシャル『今日の日はさようなら』アーカイブページ

青山(出版企画)

文芸社25周年記念 新たな取り組み 文芸社25周年記念 新たな取り組み

文芸社×朝日新聞 Reライフ文学賞

第二の人生に巻き起こる「家族の物語」をつづった作品を募集

「家族」だからこそ揺さぶられてしまう感情に気づき、人間関係の難しさと素晴らしさに一喜一憂する。
そんな人生後半戦を懸命に生きる人たちの奮闘記を募ります。

■ 特別選考委員 内館牧子 氏
■ 書籍化・全国出版
■ 賞金総額 60万円

Reライフ文学賞 募集ページ
朝日新聞社Reライフ.netでの本賞紹介ページ

朝日新聞Reライフプロジェクトは、定年や子育てが終わり、自分のために使える時間を大切にしたいと考える人々に向けたメッセージを発信するプロジェクトです。リ(Re)・ライフは文字どおり、人生の生き直しなのかもしれません。とはいえ、第二の人生は自分だけの物語ではありません。家族、親類縁者、パートナーはもちろん、友人・知人、職場の同僚やご近所づきあいなど、これまでの人との「つながり」は第二の人生に欠かせないもの。なかでも、やはり「家族」の存在は大きな役割を果たします。

近年、「家族」のかたちも変わってきました。「家族」のあり方は人それぞれです。「おひとり様」「没イチ」などの言葉に表されるように独り暮らし世帯が増加し、暮らし方は多様化しています。遠く離れて暮らす家族、婚姻関係のないパートナーやペット、共にシェアハウスで暮らす仲間だって家族と呼べるかもしれません。

「Reライフ文学賞」では、第二の人生に巻き起こる「家族の物語」をつづった作品を募集します。「家族」だからこそ揺さぶられてしまう感情に気づき、人間関係の難しさと素晴らしさに一喜一憂する。そんな人生後半戦を懸命に生きる人たちの奮闘記を募ります。

小坂流加『余命10年』映画化決定

次は劇場でみんなの茉莉に逢える、和人に逢える──小坂流加ファンの皆さまへ最高のプレゼント

最新情報は文芸社文庫NEO公式Twitterアカウントでキャッチ

これまでも本作『余命10年』のまわりでは、キセキ……と思わせられることがしばしば起きてきました。そして今回もまた、私たち小坂作品のファンは不思議な巡り合わせに驚かされることになるのです。2017年12月に第6回静岡書店大賞「映像化したい文庫部門」の大賞を受賞した『余命10年』が、ついにその部門の冠「映像化したい」を現実のものとすることになったのです。ある意味でこれは、受賞をあと押ししてくださった方々、またその後この作品に共鳴してくださったファンの方々に向けた最高のプレゼントになるのではないでしょうか。

これまで「本」というフォーマットに収まり、それゆえ接点をもちえなかった方も数多くいらっしゃったかと思います。そうした人たちに向けても、小坂さんの『余命10年』という作品の価値をお届けできることを心からうれしく感じています。『余命10年』は泣ける恋愛小説として語られることが多い作品で、確かにまぎれもなく素晴らしい恋愛小説であるには違いないのですが、それだけじゃない──それだけじゃない魅力を、今後よりいっそう多くの方々お伝えできることもまた、この映画化のひとつ意義といえるのかもしれません。

この春に25周年を迎えた文芸社の社員も、大きな節目にこうした僥倖が巡ってきたことを奇蹟のように感じています。一社員としてだけでなく、一小坂ファンとして、作品に向けた熱い思いとともに劇場に足を運びたいと思います。

※このページの情報は、2021年4月時点のものです。

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