犬は嫌な目つきをしない
犬にも喜怒哀楽はあるが嫌な目つきはしない。
朝日新聞Reライフ文学賞最優秀賞。
四十歳を間近にして結婚することになり、真っ先に思ったのは、犬を飼いたいということだった。なぜ犬が好きかといえば、私が孤独な子どもだったからだろう。生後三カ月でポリオに罹り、左脚に後遺症を負ったため、ふだんから一人遊びが多くなり、飼い犬はいつもそばにいてくれた。子育てにおいて、わが子に強い心理的影響を与えるのは、親が生きてこられなかった人生であるという。妻や子どもと暮らしながら、露呈した未熟さを、私はここでも飼い犬や猫に助けられた。第5回Reライフ文学賞長編部門最優秀賞受賞作。










