今回も幅広い年齢層の方から、たくさんの作品をお寄せいただいた。コロナ禍の影響で外出もままならない社会状況のなか、はじめて創作にチャレンジされた方や、これまで以上に集中して創作に臨んだという方も大勢いらっしゃった。この「えほん大賞」は「日本語のチカラ・表現力を後世に残したい」という理念を掲げているが、ぶ厚い雨雲が垂れこめているような現状において、読者を元気づけたい、子どもを励ましたいという想いが込められた作品もたくさん拝見することができた。応募者の方々の熱意に感心しながら審査を進めた。

大賞となった作品「オキモチや」「コツコツバス」は、最終選考においても一頭地抜く出来栄えであった。リズミカルでユーモラスな表現が印象的で、読者の関心を牽引する展開力を持っていた。「宇宙人あらわる」も意外な展開と宇宙人が魅力的に描かれている点が特徴であった。また、「まっています」は心の動きを丁寧に描いており、簡にして要を得た表現も評価した。「へんなけもの」は、グラフィックデザイナーが制作したような仕上がりで独創性も光る作品だったが、何度も読みたくなるという面白味は欠けていると感じた。

「犀の背中」はナンセンスが魅力的で、雰囲気のあるいい話であった。「せんせい けっこんしてくれる」は、読みやすい文章で話の流れもスムーズであったが、テーマに新味を感じない点が惜しまれた。「星どろぼうのイシュア」は、絵本としては難解な表現だと思われたが、ロマンティックなストーリーに仕上がっている点を評価した。

特に絵本部門に関していえることだが、既視感を覚える作品が多かったように感じた。ストーリーやイラストの作風について独自性を打ち出した作品を待ち望みたい。また、文章表現については、表記のブレに気をつけたり、読者対象（大人向けか、子ども向けか）に配慮したりと基本的なところを押さえて、推敲を重ねていただきたい。