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日本国内の2025年の出生率は「1.14」だそうです。第2次ベビーブーム(1971〜74年)を最後に、基本的に下降トレンドではありましたが、それでもときおり前年比でプラスに転じることもあった時代はすでに久しく……。ここ10年は低下しつづけ、ついには過去最低値を更新する事態に。推移のグラフのマイナスの傾きも徐々にきつくなり、まさに我が国日本の「子ども」をめぐる問題は深刻化していくばかりです。
近代国家として成熟すればおしなべて数値が落ちる傾向はありますが、日本国内の論じられ方としては、国家存亡の危機を水平線の向こうに見るような社会の様相です。国や行政による出産や育児への実効性のある支援が欠かせないのはもちろんですが、個人ひとりひとりにしても、“それ以上”の部分に向けた意識改革が必要なのかもしれません。どうにもSF作品に登場する直線的思考の科学者のような乱暴な論調になってしまいますが、たとえば、数少なく生まれた子どもたちだって、やがては親となり子を生み育てる立場となるわけですから、「親としての資質」を身につけておく必要があるわけです。しかも分母となる数(つまり子ども)が少ないだけに重要度は一段と増しているはずです。ひとむかし前なら「背中」を見せていればよかっただけの親は、いまや手取り足取り子に生きる術を注ぎ込み、ひいてはそのやりとり含めたすべてをもって、“より望ましい子育て資質を磨く術”として末代まで引き継ぐことを求められているかのようです。
では、これからの時代の子どもは、どのような資質を養うべきでしょうか。そのひとつとして挙げたいのは、時代に抵抗することのできる資質、移りゆく時代に向き合いながら、それでも「自分はこうだ」と我が道を行くことのできる資質です。わずか25〜30年という短期間に、インターネットの普及、そしてAIの台頭という大きな変化を経験した現代、更新に次ぐ更新の風潮にただただ流され埋もれることなく、しっかりとした自我をもつ子どもを育てていくために読ませたいのは、特定の価値観に囚われない生き方を知るテキストです。そうした学びの初期段階で使用されるテキストといえば、そう「絵本」や「童話」。絵本・童話作家を目指す方は、ちょっと気持ちが昂る部分があるのではないでしょうか。人ひとりの人格形成に関わるどころか、国家の危機を救うことにつながるのですから。ということで今回は、子どもたちが時代に流されることなく自分らしさを育んでいくためには、絵本作家・児童文学作家志望者はどのような作品を創作すればよいのか──そんな作品づくりについて考えてみたいと思います。まずは、参考までに一例を挙げてみましょう。
おこちゃん、
おこちゃん、
どうして
そんなに
たくさん
こいぬをひろってきたの。
だってないていたからよ。
だから、
ゴローに
おかあさんになってもらうの。
『おこちゃん』は、銅版画家の山本容子がみずからの子ども時代のエピソードを綴った絵本です。雄の飼い犬ゴローを、鳴いていたから拾った小犬たちのおかあさんに仕立てようとする少女の自由で伸び伸びとした日々の風景は、まるで別の不思議な世界への冒険に誘うような新鮮なワクワク感に溢れています。家族だってただ者ではありません。ハイカラなじいちゃんは、キューピー人形を愛する孫娘に対し、体を張ったいたずらを仕掛けます。7体もの大小のキューピー人形を買い込んで、腹にぐるりと巻きつけるという苦心の末に家へともち帰ると、昼寝をするおこちゃんの周りに入念にセッティング。目覚めたおこちゃんがびっくりしてひっくり返ると、じいちゃんもびっくりひっくり返るのですから、「ドリフかよ!」とついツッコミたくもなります。このじいちゃんにして、この孫娘あり……。もし、このような家族のもと、このような環境に育たなければ、日本を代表する銅版画家は生まれていなかったかも……と、かなりの説得力をもってそう思わせる一冊です。
子どもを育てる資質を磨くために重要なひとつとして、己のキャパシティを広く豊かにすること──が挙げられるでしょうか。常識や既成の概念に囚われず、知性と思想、創造性の自由さを育むということで、子ども時代のその実践は、ほかでは得がたい貴重な経験となって、次の世代へと引き継がれていくはずです。
前述のとおり、育児に望ましい資質はほかにもあります。たとえば、愛、真の優しさ、挫けない心、向上心、誠実さ……。それらのテーマは、絵本や童話を描きたい人それぞれが見出し考えるべきことです。また、愛も優しさもそのほかいろいろなテーマも、子どもを育てる資質を磨くという視点を取り入れることで、表現やストーリー構成のポイントも変わってくるはずです。そこに描かれるのは、おそらく、現代の子どもたち、これから生まれてくる子どもたちが通常ならば目にすることのない、リアルとファンタジーが渾然一体となったごとき“生”の一幕。そのような世界に親しんで成長していってこそ、逞しく創造性に満ちた子どもたちを生み育てていける大人になると信じます。畢竟、未来の絵本や児童文学作家にとって、これはひとつの重大な使命。「子どもを育てる資質を磨く」ための作品づくり──絵本・童話作家になりたい皆さんには、世のため人のための実りある創作修行として、ぜひ一度挑戦していただきたいものです。
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