ゆきちゃんの海
〜誰にだって人生に寄り添う故郷の風景がある。〜
穏やかな海辺で壮絶な体験をした母。
その生涯を描き、反戦の思いを伝える物語。
ゆき子は、妹を亡くし、兄と母が家を出てしまい、父もいない。じいちゃんとの貧しい暮らしのなか、幼馴染のヨシオだけが心を許せる友だった。小学五年生の二人が海辺で遊んでいた時、ヨシオが目の前で亡くなる。それから、最も身近な海を見られなくなり……長い間トラウマに苛まれてきたゆき子が、時を経て変化を遂げていく様子を丹念に描く。反戦への思いがしみじみと伝わる秀作。