顔のない顔
僕はマスクの人間に安心感を覚える──
心に傷を抱える若者たちの葛藤と再生の物語。
「僕はマスクの人間に安心感を覚える。すべての人間がマスクをつけて外出すればいいのに」。そんな願望をもつ大学生の冬目が、雨の日に幽霊のような女性、京に出会った。京はうつろな瞳で生気がなく、仮面のように表情もない。京の「助けてください」のひと言を機に、二人の距離は徐々に縮まるが……。心に傷を抱える若者たちの葛藤と再生を繊細かつ鮮やかに綴った長編小説。