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「輝かしい未来」と「限りない可能性」を感じさせる新しい書き手を募集します。
映画が30億円超の興行収入を記録した文芸社文庫NEOレーベルの最大のヒット作『余命10年』。第2作『生きてさえいれば』と合わせ小坂流加作品は累計100万部を超え、いまなおその魅力は広く長く評価されています。さらにこのレーベルからは、人間六度氏や新馬場新氏など国内の権威ある賞の受賞作家が続々誕生。2025年には坂井のどか氏(第6回優秀賞)が第17回角川春樹小説賞を受賞、第7回大賞受賞の橘しづき氏は受賞作『神様のレストランで待ち合わせ(原題:君を待つひと)』をヒットさせるだけでなく、版元各社から次々とエンタメ小説市場に新作を送り込むなど、文芸社文庫NEO小説大賞をきっかけに新しい才能を開花させる好例は枚挙に暇がありません。新進の才能をお迎えすべく誕生した同賞への応募総数はいよいよ6,000点に迫ろうとしています。本年も応募者の皆さまとさらなる高みを目指すべく、「第9回文芸社文庫NEO小説大賞」の作品募集を開始いたします。次に輝きを放つのは、あなたかもしれません!
角川春樹小説賞受賞前の坂井のどか氏も登場! NEO作家たちが身近に感じられるこちらの記事もお楽しみください。
文芸社文庫NEO作家特設コンテンツ - 前編
文芸社文庫NEO作家特設コンテンツ - 後編
文芸社文庫NEOより書籍化・出版/副賞として賞金30万円
『前払いぼったくりバー』
本作は学生大喜利を題材に、主人公である鯰尾(なまずお)と哘(さそう)というコンビの奮闘を描いた青春小説である。漫才やショートコントではなく、大喜利を題材にした作品ということで非常に独自性が高く、なおかつ卒業後の進路に悩む等身大の大学生である鯰尾と哘の姿からは、普遍性が感じられる。大喜利を一人称小説で描く相性の良さも相まって、お笑いに詳しくない読者であっても飽きることなく読み進めることができる作品であろう。また、題材はさることながら、鯰尾と哘という対照的な二人の人物造形が巧みで、育ちも大喜利への情熱も感性もまったく異なる二人が織りなすドラマには、誰もが熱い気持ちを抱かざるを得ない。とりわけ「自分の得意な大喜利が世間や就活では全く評価されず、その分野において抜きんでているわけでもない」という鯰尾の挫折は、自分自身が「特別な人間ではない」ということに悩んだことのある人であれば、誰もが身につまされる話ではないだろうか。文章や描写がまだ粗削りな作品ではあるが、独自性と普遍性を携えながら、読者に強い共感を抱かせることのできる本作は、大賞にふさわしい作品である。
来年で記念すべき10周年を迎える「文芸社文庫NEO」レーベル。2026年4月現在、総刊行点数は50点となり、本レーベルは多彩な作家が誕生する場となっている。そして、そのレーベルの取り組みの一環として始動した「文芸社文庫NEO小説大賞」は、今回(第9回)までの応募総数が6,000点を超え、業界でも注目のコンテストとして認知されるようになってきた。「輝かしい未来」と「限りない可能性」を感じさせる新しい書き手を募集します――というコンセプトに負けない規模へと成長していることを、一選考委員として心から嬉しく思う。今一度襟を正す気持ちで、今年もまた選考に臨ませていただいた。
今回、最終選考作品として選出されたのは8作品であった。選出される作品数に関しては、具体的な基準があるわけではない。多い回もあれば、少ない回もある。そうした中で、8作品が選定されていることは、それだけ優れた作品が多かったことの証左に他ならない。事実、選考会では白熱した議論が交わされ、大賞作品を決定することに大変苦慮した。大賞作品「前払いぼったくりバー」については先述しているので、こちらでは最終選考作品に選ばれた、そのほかの魅力あふれる作品たちについて触れていきたい。
「終末はどこへ行こうか?」は、灰の雪が降りしきる終末の世界を描いた群像劇である。情景が浮かんでくるような、美しくも不穏な世界観には高い評価がつけられていた。また、四組の男女の物語が絡み合い、綺麗に収束していく様には作者のセンスを感じる。その一方で、登場人物たち以外の世界の状況があまり描かれていない点には厳しい意見が寄せられた。幻想的で壮大なテーマの作品であるがゆえに、土台となる描写にはより一層のリアリティが求められる。ぜひ原稿を見直していただきたい。指摘した部分が修正されれば、物語の終わりにさらなる感動を呼び起こすことができるだろう。
特殊な記憶能力を持った男が、ひょんなことから非公式の情報機関に採用され、奮闘する様を描いた「記憶係と猫」は、上質なエンターテインメント作品であった。突飛な設定でありながら無理がなく、話の展開にも工夫があり最後まで飽きることなく読み進めることができる。一人称視点の長所を最大限に生かして、主人公の内面をなぞらえた地の文には意見が分かれたが、手放しで評価する声も多かった。ただ、冒頭の期待値の高さゆえに、話が小さくまとまってしまった点が惜しまれる。ぜひ、NECOという組織や関わっていく事件の規模、登場人物たちの設定などを見直して、改稿にあたっていただきたい。
「背負いしもの」は世代を超えて紡がれる、家族の絆を描いたストーリーが魅力的な作品である。時代を跨いで描かれる作中の登場人物たちは、皆それぞれの悩みを抱えているが、それらを感情に流されることなく淡々と描き上げて、現代へとつなげていく筆致には高い評価が寄せられた。気にかかる点として挙げられたのは、時代を跨ぐ場面転換や登場人物の多さから個々人への感情移入が難しく、なおかつ全体的なテーマが読者目線で読み取りづらいことである。描こうとしている内容の評価が高かっただけに、その一点が非常に惜しまれた。全体の構成を見直すことで、今以上に良い内容に磨き上げてほしい。
「もう一度見たい暁」は、主人公がボクシングと出会うことで、トラウマを乗り越え成長していくという一本筋の通った普遍的な魅力のある作品である。選考会でも、万人が感情移入してしまうような繊細な筆致に高い評価が寄せられた。過去を乗り越えて辿りつくエンディングと、爽快な読後感には、作品としての高い完成度が見て取れる。その一方で、全体のボリュームを含めた構成と描写過多にも感じられる虐待などの暴力シーンが議論の俎上に載せられ、大きく意見が分かれてしまった。伝えたい思いが強く出ていることは素晴らしい。そのうえで、再度読者を意識して改稿に取り組んでいただきたい。
「三国志蜀書列女伝 趙媛姜 この命は愛のために」は三国志の劉備入蜀前夜を描くというチャレンジングな作品であった。マイナーな題材であるにもかかわらず、最後まで読ませる筆力や話を膨らませる想像力、歴史的知識には大変高い評価がつけられていた。また、作中内で敵対関係を明瞭に描いている点には、非凡な構成力も感じさせられた。評価が分かれた点は、物語の結末や読後感が事前の予想を超えてこないという一点である。読者目線で、この作品を手に取る説得力や訴求力があるかを今一度考えてみてほしい。優れた作品であるがゆえに、題材の選び方や話の見せ方が選考会でも惜しまれていた。
日露戦争当時の諜報員を描いた「スパイ身の上しらず」は、重厚な物語の中に易学を絡めた意欲的な作品である。戦時下の実情や史実を織り交ぜながら、敵国に潜入するという過酷な任務を描き上げた点には満場一致での高評価が寄せられた。正体が露見するかしないか、という常に綱渡りの心理的攻防を読むとき、読者は思わず手に汗を握って事の成り行きを追ってしまうだろう。評価が分かれたのは、正統派のスパイ小説としての側面と、エンターテインメントを意識した部分が嚙み合わず、構成上アンバランスになってしまった点である。全体を読み直したうえで、ぶれない作品に磨き上げてほしい。
「音楽に願いを込めて」はカントリーミュージックの流れる美しい短編映画を観せられたような、そんな気持ちになる上質な作品であった。主人公の成長を描く冒険譚であるとともに、過去に降りかかった不幸やジョージの死という悲しみを乗り越える物語でもあるというストーリーラインには、誰もが感情移入してしまうだろう。年齢性別を問わず、誰にでも楽しむことができる物語になる可能性を感じさせられた作品である。ぜひ全体のボリュームを再確認していただき、物語全体を再構成していただきたい。読者が期待するシーンが追加されることで、より輝くことができる作品であると思う。
応募された多くの作品は、自らの作品で感動や驚きを届けたいという強い思いにあふれていた。その一方で、主観が先行し、読者の存在を意識できていない作品も多く見受けられた。小説として世に出される以上、作家が常に考えなければならないのは、読み手である読者の存在に他ならない。「予想を裏切ること」も大事だが、「期待を裏切らないこと」は小説の大前提である。優れた作品はどんなテーマであっても読みやすく感じられるものであり、理解がしやすければ、自然と作品と読者の間に感情の導線が引かれ、物語として完結を迎えることができる。そうして読者はその物語を誰かに伝えたくなるのである。ぜひ「小説は読まれて初めて完成する」ということを念頭に、どうしたら自分の作品を最後まで飽きずに読んでもらえるかを考えてみてほしい。そのうえで、自分にしか書けない、真に伝えたい尖った部分を打ち出してほしい。そうなれば、創作における作家の企みというものは、成功も同然である。以上の点を踏まえつつ、書き手の方々には今後も創作活動に励んでいただきたい。