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「輝かしい未来」と「限りない可能性」を感じさせる新しい書き手を募集します。
いまや文芸社文庫NEOの看板となった涙より切ないラブストーリー『余命10年』。その発行部数は50万部を突破し、第2作『生きてさえいれば』と合わせ、小坂流加作品の累計発行部数はついに70万部を突破しました。すでに多くの読者を魅了してきた『余命10年』ですが、ついに2022年春、ワーナー・ブラザース配給の映画としてファンの前に再登場し、作品がもつ新たな魅力が引き出されようとしています。
また2021年は、文芸社文庫NEOの作家関連で新たなビッグニュースも舞い込みました。8月、『BAMBOO GIRL』著者の人間六度氏が第9回ハヤカワSFコンテスト(早川書房)で大賞を受賞、同氏はついで10月に第28回電撃大賞(KADOKAWA)にてメディアワークス文庫大賞を受賞。エンタメ系小説市場では権威ともいえる賞の連続受賞に、人間六度氏の文芸社文庫NEO作品『BAMBOO GIRL』もまた勢いづいている状況です。
この、いまもっとも勢いある「文芸社文庫NEO」をプラットフォームに、新しい才能を発掘すべく2017年にスタートした「文芸社文庫NEO小説大賞」。『赤とんぼ』で初代大賞に輝いた吉川結衣さんもまた、その後の活躍により着実に小説市場での存在感を高めています。
今年もまた、5回目となる文芸社文庫NEO小説大賞を開催いたします。まだ出会っていなかったけれど「ちゃんと、しっかり、おもしろい」。そんな“キラリ”と光る才能を求めています。旬を迎えようとするフレッシュな書き手と人気イラストレーターが共鳴したとき、セカイはもっと、光り輝くと信じて……。次はあなたが輝きを放つ番かもしれません。
文芸社文庫NEOより書籍化・出版/副賞として賞金30万円
『死神のおばあさん』
街で「死神」と呼ばれている老婆と、孤独な女子高校生との心のふれあいを、ミステリ風の謎をちりばめて描いた小説である。主人公の楓が日常の中に潜むふとした「謎」を、死神と呼ばれている老婆、久美子の安楽椅子探偵さながらの導きで解決していく展開には、巧みな工夫と綿密に練られた構成が見て取れる。ミステリ風とは書いたが、本物のミステリ小説に引けを取らない確かな質を持った作品であることは間違いない。また、それらの謎を解いていく物語が「孤独な人同士の心のふれあい」というテーマに密接に絡んでいる点も高く評価したい。話の冒頭では、どこか達観して冷めた印象を受ける楓が、謎を通して出会う人々や久美子との交流を通して、段々と等身大の少女になっていく過程には青春小説のような爽やかさと感動を覚える。とりわけ終盤の「死神の過去」に関する物語は、数々の伏線・魅力的なストーリー展開も相まって、小説の最後を飾るに相応しいエピソードとなっている。ミステリを好む読者、感動的な物語を期待する読者、そして青春群像劇を楽しみたい読者。誰もが楽しめる普遍的な作品であり、様々な魅力を内包した本作はコンテストの大賞作品に相応しいと言えるだろう。
初開催から5年を数え、第5回を迎えた「文芸社文庫NEO小説大賞」だが、今回も幅広い世代からオリジナリティに富んだ多くの作品が寄せられた。第1回の時点では20代の応募が最も多かったが、続く第2回以降は30代、40代、50代、60代以上の方々からの応募数が顕著に伸びており、全体を通して実に多様な世代からの意欲作が寄せられるコンテストとなってきている。当コンテストの大賞作品が刊行される弊社レーベル「文芸社文庫NEO」のコンセプトにある通り、年齢に関係なく「キラリと光る」作品を模索しているので、引き続き多くの可能性に触れながら選考をしていかねばならないと思いを新たにして、今回の選考に臨んだ。
寄せられた作品の中では、依然として恋愛小説や青春小説の応募数が目立つ結果となっている。次いで歴史小説やミステリー小説、SF小説が多く見受けられたが、「恋愛×ミステリー」や「青春×SF」など、ジャンルの垣根を越えてテーマを組み合わせた、創作意欲に富んだ作品も増えてきている点は非常に興味深い。どの応募作からも「自分にしか書けないモノ」を描こうとする強い熱意を感じることが多く、それを物語に昇華しようと苦心し努力する様子も見て取れた。物語の着想を自分の中で深掘りし、曖昧でなくしっかりとした設定を携えた作品に出来るかどうかは、どれだけそこに時間を費やしたかが肝要だと思われる。執筆をしていく過程で話の芯の部分がずれないように、ぜひ「構想を練る」という点を大事にして欲しい。今回は魅力的な作品が非常に多かっただけに、選考基準として「ぶれない質」が問われる会となったと思う。
そうした中で最終選考ノミネート作として選出された10作品は、どの作品も確かな文章力と丁寧な構想を基にして書かれた、「読み易さ」と「読み応え」を兼ね備える個性豊かな小説群となった。講評で触れた通り、大賞作品は『死神のおばあさん』となったが、次点として挙げられたのは『君とノスタルジア』『幽霊とペリドット』である。
『君とノスタルジア』は京都大学相撲部に年齢を偽って参加する社会人を主人公にした青春群像劇である。軽妙な文体でテンポよく読むことが出来、個性豊かな面々との飽きの来ないやり取りが非常に小気味よい作品であった。なんにでも「どうして?」としつこく訊くが為に「どちて坊や」と揶揄される主人公と、変人ばかりの相撲部の面々が織りなすユーモアたっぷりの日常は読者を飽きさせること無く楽しませるだろう。あえて追及するとすれば、話の構成が少し気に掛かる。勢いがありテンポの良い作品ではあるが、文量の少なさも相まって物足りなく感じられた。最後の大会を迎えるまでにもう幾つかの山場を設けることで、登場人物たちを更に深掘りすることが出来るし、話全体の厚みを増すことが出来るだろう。
『幽霊とペリドット』は宝石をモチーフにした、幽霊との恋模様を描いた恋愛小説である。幽霊との恋愛を描く作品は数多くあれど、本作はその設定にひと工夫加えることで新しい見方が出来る作品となっている。また、物語を彩るように登場する多くの宝石が、登場人物の感情の機微を反映するかのように話に絡んでくる点には、幽霊という要素も相まって美しい世界観を感じた。しかしながら、多くの宝石が出てくるゆえに話が間延びしている印象を受けた点が惜しまれる。モチーフとする宝石を絞り、主役である桃とユズの関係や過去のエピソードを、もう一歩踏み込んで書くことでより読者の共感を得やすくなると思う。ぜひもう一度作品を見直して二人の関係性を再構築することに挑戦して欲しい。
賞全体として、今回は最終選考ノミネート作に拘らず、多くの優れた作品が寄せられていた。特に「読者が興味を持つ作品」は非常に多かったように感じられる。賞の選考結果を分かつ基準は「読者の心に響く作品」かどうかという点である。妥協せずに登場人物たちの心情を、自分の物語を書き切ったその先にこそ小説としての魅力が出てくる。ぜひ今現在も決して劣っていない、優れたその作品を見直していただき、あと一歩、もう一歩と改善を重ねて欲しい。書き続けること、考え続けること、見直し続けることがいつか突き抜けた作品を誕生させる大きな原動力となるはずである。