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それぞれの出版体験

ある作家の型にはまると自分の個性を潰してしまう

森定 学さん

“メッセージを発信したい”という純粋な思いが原点――。たくさんの本を読まれ、自己の作風をいまなお追求しつづける森定さん。今回は、なかなか知ることのできない制作秘話をお寄せいただきました。

自分の思いを、風景や登場人物の立ち居振る舞いを借りて訴える物語をつくりたい。それを川端康成のような美しい文章で表現したい。それが私の創作活動の原点です。少年時代にため込んでいた文学への思いは、忙しい銀行勤めで長いあいだ断絶していましたが、退職と同時にその思いがふつふつと蘇りました。夢中で書き上げたはじめての紀行エッセイは、コンテストで入賞したこともあり、文芸社さんから出版することになりました。それが、私のはじめての出版作品『近江 春夏秋冬―心の紀行』です。堅い銀行員がこんな情緒的な文章が書けるんだと、仲間のあいだでは評判になりました。

その後は本格的な小説を世に出したくて、各社の賞に何度も投稿しましたが全敗でした。入賞しない限り講評がありませんから、どこがよくないのかわかりません。ある人からは、有名作家の塾に通って勉強してみては……とのアドバイスもいただきましたが、その作家の型にはまるのは自分の個性を潰してしまうことのように思えて、いまのところ自己流を通しています。その代わり、現代作家の著作をできるだけ多く読み、自分流の作風を確立しようと悪戦苦闘しています。

ある作品を「草思社×文芸社W出版賞」に応募してみました。残念ながら入賞はしなかったのですが、文芸社さんから作品についての丁寧なコメントがあり、よくない点、評価される点がよく分かりました。入賞しなかった作品でも、手の入れ方次第では優れた作品になることを知り、編集者の力を借りて出版に踏み切ることにしました。それが、人生の第2ステージの後半をどう生きるか、自分への道しるべ、妻との相克と理解を自分自身が考え納得するために書いた『黄昏のビギニング』と、昔の仲間へのオマージュであるノスタルジックな作品『千田町物語』です。

私と同年代の方々からは『黄昏のビギニング』が、銀行にお勤めの経験がある方からはやはり『千田町物語』が評価されているようです。

『黄昏のビギニング』は、現代日本の社会問題でもある退職後の生き方――つまり「人生の黄昏」がテーマに据えられ考えさせられるエピソードを湛えた一冊。『千田町物語』は、銀行員生活の光と影を知る上でも興味深い作品に仕上がっています。森定さん、ありがとうございました!

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