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「作家になりたいけど、何を書いていいかわからない……」
突き動かされる“何か”から得られる力により、一作二作と書き上げて文学賞に応募。しかし主催者側からは、一次選考の連絡すらなくナシのつぶて――。これは、賞レースに参戦する作家志望者がの十中八九が陥るお定まりのコースです。大志を抱いているぶん、冒頭の一節は口が裂けても言いたくない。外部からは「ハイ、とんでもない甘ちゃん来ましたー」みたいな失笑を買うに違いなく、そればかりか、自身のプライドも瞬時に瓦解してしまう気もするからです。でも、それは常識に囚われた思い込み。そもそも「作家になりたい」という気もちは、文章や創作への憧れ、敬意から生まれてくるもの。すんなりと夢の旅路に就けないからといって、恥じる必要は一切ありません。何より、突き動かされる“何か”が心に芽生えた瞬間の、自分自身の志を軽んじてはなりません。それを簡単に破り捨てたりしない者だけが、真のプライドを手にできるのですから。
さて、暑苦しい励ましの言葉はこのくらいで充分でしょう。というのも、上に書いたような惑いや畏れの念を抱いている時点で、あなたはすでに「作家」の門前に立っているといえるからです。「門前の小僧習わぬ経を読む」という諺がありますが、そんなあなたに必要なのは、朝な夕な耳に聞こえてくるお経のごとく、文章・創作に自然と馴染んでいくことのできる周辺環境づくりです。この「環境」なしに作家の道を歩んでいった者はいません。常識的なオソレに搦め捕られることなく、その環境づくりを意識していく姿勢は、作家の夢を叶えていくための一歩として何より大事です。
環境整備というと形から入るようで軽く思われるかもしれませんが、それは畑作業でいえば土づくりと同じ。「書きたいものがわからない」と溜め息をついて自分のなかから生まれてくる“何か”をただ待つだけでは、まさしく棚からぼた餅を期待して農地を耕さず薄ボンヤリと口を開けているのと変わりません。無為無策に待つのではなく、外に出ろ、己でダンゴ屋を探せ! なんならつくれ! 作家道においてそれすなわち「まず自分から文章を書いていく」というスタンスです。あなたがあなたの才覚を信じてやらずして、いったいどこの誰が信じてくれるというのですか。
米国の詩人、マヤ・アンジェロウはこんな言葉を残しています。
私のしようとしているのは書くことです。2週間かけて「猫がマットに座っている。そういうことだ。ネズミではない」と書くとしましょう。おそらく世界でもっともつまらない悲惨な文です。しかし私は挑戦します。書くといったら書くのです。するとその時、ミューズが「分かった分かった、そっちに行ってやるから」とやってくるのです。
愛猫のタマでもチョビでもいい。じっと見て、「これは猫だ」と書いてみる。するとそこからは、芋掘りのようにニョキニョキと次の文章がつながり出てくるはず。「猫だからどうしたというんだ」「猫だ、どこからどう見てもやはり猫だ」……と、それはもはや止め処なくつづくことでしょう。そうです、とりあえずでも何でもいいから“書いてみる”というアウトプット作業を経たことで、思考の意識的な組み立てがはじまったのです。これでもう、作家になるための「周辺環境づくり」に着手する準備が整ったといえましょう。へ⁉ そんなことで? と思われるでしょうか。でもそうなんです。想像してみてください、この流れを習慣化して365日つづけた人物と、思索を頭のなかでひねくりまわすばかりで悶々と書かない365日を過ごした人物とでは、どちらが「書ける人」になるかどうかを。え? 1年も待てないと? 仕方がありません。では、あなたの芸術活動に息を吹き込む女神ミューズに、いち早くご降臨いただくためのとっておきのメソッドをお教えしましょう。それは「感想文」の執筆です。
「感想文」とは、いわば「書評」の入門版。書評といっても、本を読むことに限らず、映画を観ても、あるいは音楽を聴いたっていいのです。「読む」「観る」「聴く」というインプット工程を経て、能動的なアウトプット作業に取り組むことが、作家修行においておおいに有効であると心しておきましょう。ジョージ・オーウェルもヘミングウェイも、無名時代には書評や雑文を書いて糊口をしのいでいました。小林秀雄や吉本隆明は、当初は作家や詩人を志すものの、いつしか評論が本業となっていきました。歴史に名を残す先達のこうしたエピソードは、書評を書く、感想文を書くことがもたらす恩恵の大きさを示しているようにも思えます。
では、書評や感想文は、どのように書けばよいのでしょうか。これにしても、書き方に決まりというものはありません。ただ、良質のアウトプット作業を行うためには、いうまでもなくインプットの過程が重要となるでしょう。どのように読み、観て、聴くか。スマホ片手にカップ麺などをジュルジュル啜りながら――は論外です。かといって正座していればいいというものでもありません。読んだり観たり聴いたりしたとき、受け手には何かしらを「感じる」という反応が起きます。感じたには感じたけど、「よかったよかった」と満足して終わっては元も子もありません。自分が何を感じているのか、なぜこのような感情反応が起きたのか、それをどこまでも深く省察して初めて「書く」というアウトプット行為につながっていきます。「感想文ていうと小学校の宿題とかで出るやつでしょ」とナメる勿れ。感想文は、感じ、考え、また自分という個から普遍的な世界へと意識と思考を広げていく、クリエイションのレベルを高めるために非常に有効かつ取り組みやすい鍛錬ツールなのです。
さて最後に、「感想文」を書くための具体的なノウハウとして、前出のジョージ・オーウェルの言葉を挙げておきましょう。
(George Orwell『Politics and the English Language』Penguin/2013年)
1〜5までは具体的ですぐにでも実践できそうです。想像するに、実際有益でもありましょう。しかし「6」の1行はそれにも増して重要です。いっておきますが、我が意を得たり! ルールは破るためにある! などと嘯いて1〜5を無視して6に飛び込むなんてことは禁物です。オーウェルのこの第6条は、そんなヤツもいるよなと見越した上での英国人ならではのシャレでもあり、これこそが生まれついての天才の顕れと見るべきものでしょう。ルールを破るのは痛快で、ともすれば革新的な成果も上がります。けれどそれを実行するのは、天才でない大多数の作家志望者であれば、1〜5の基本を身に着け土壌を耕してからのこと。1〜5を遵守し書きつづけ、いつか確信的にルールを破ろうと思えたとき、そのときこそ、あなたはすでに作家の風格を具えるに至ったのだといえるでしょう。さあ、「感想文」という作家になるための糸口はご紹介しました。この方法論をしかと引き寄せて、プロたる栄誉を手にしようではありませんか。
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