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小説における「魅力ある人物」とは

2016年04月15日 【小説を書く】

完璧な人物 ≠ 魅力的な人物

小説において、ストーリーとともに登場人物の造形は、作品の魅力に直結する一大要素です。前者ストーリーが音楽においての楽曲だとすれば、後者は歌詞とでもたとえればわかりやすいでしょうか。ダイナミックな旋律(展開)で聴き手(読み手)の心理を揺さぶりつつ、グッと身に迫る歌詞(登場人物)で、物語世界に引き込むための感情移入を促す――といった具合です。ストーリーがいくら波瀾に富んでいても、主要なキャラクターの造形が中途半端では、読者の胸に力強い印象の矢を突き立てることはできないでしょう。

だからといって、長所ばかりを積みあげれば魅力的な人物になるわけではありません。容姿端麗で頭脳明晰、運動神経も抜群でお金もち、正義感も強くて勇気があって、とにかく万能、みたいな主人公では、作品に必要な「ドラマ」を生み出すことができません。何より、現実味が薄まってしまい、読者の共感を得ることができないはずです。

魅力的な人物 ≒ 困難を超えてゆく人物

これまでに読んだり鑑賞したりした小説、映画、漫画の主人公、とくにエンタメ作品寄りの作中の彼らを思い返してみれば、そのどれもが完全無欠な人物などではなく、どこかに短所や弱点があったのではないでしょうか。そしてその短所こそが読者の心を掴む主人公の「個性」として際立ち、さらには弱点を超えてゆく「過程」こそがドラマになっていたはずです。いじめられっ子が大一番でガキ大将に打ち勝つ、弱小ラグビーチームが数々の苦難の末に全国制覇を遂げる……スタート地点とゴール地点の落差は、ただそれだけでシンプルにドラマ性を発生させてくれます。読者が登場人物たちに魅力を感じてくれるかどうかは、彼らに設定する「短所」と「弱点」がひとつのキーになってくると考えてしまっても間違いありません。

リアルの人とは、「強いor弱い」「長所or短所」だけではない

そしてもうひとつ。リアルな世界における人間とは、第三者に何がしかの印象を植えつける特徴だけを備えているわけであはりません。美点や欠点とも判別のつかない、ヘンなクセや嗜好性をもっているはずです。それと同様に、ストーリー展開のためには必要とは思われない、物語の主旋律ともまったく関係のないクセをひとつ登場人物に与えることで、その輪郭はいよいよリアリティをもって読者に届けられることでしょう。

パリッとスーツを着こなし事件をスマートに解決する名探偵が、じつは大の甘党で常に羊羹(ようかん)を内ポケットに忍ばせている。大学の華と呼ばれる美女が、人前では絶対に靴を脱がない。その理由とは――。そんなことでいいのです。

アメリカのメジャーリーグで 長きに渡り活躍してきたイチロー選手の朝食が、1年365日毎朝奥さま手製のカレーライスであるというのは、しばしばまことしやかにメディアでとりあげられるエピソードです。もちろん、これでイチロー選手の野球人としての魅力が増補されることはありませんよね。キャリア的にはプラスにもマイナスにも働くことはありません。けれども、「あのイチローが?」とか、逆に「ああ、なんかイチローらしいかも」と思わせたりして、氏を身近に感じるキッカケにはなります。

このように、対象となる人物の知り得る情報の総体をもって、私たちは「人」のイメージを把握していくもののようです。そんな流れをあなたの小説世界にももち込むことができれば、魅力ある人物たちは相応にガッチリした世界観をすら創りあげてくれるはずです。

※この記事は弊社運営の【気軽にSite 執筆・出版の応援ひろば】掲載の記事を再構成して作成しています。

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