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人によって本を書きはじめる動機はさまざまです。多くの場合は、喜怒哀楽の感情の琴線が何がしかの影響で弾かれ、「書こう!」という衝動が立ちあがるのでしょう。この場合「書くこと」とは、心のなかに湧いた感情をコントロールするための、自己保全の無意識的な行動といえるのかもしれません。経済活動のひとつとして執筆するプロ作家であっても、動機の核にあるのはエモーショナルな要因であるはずです。
他の感情と比べ創作や執筆の動機となりやすいのは怒りや悲しみです。しかしそれも文章を使って感情の吐露をはじめとたん、その感情に至るまでの経緯は自分なりに体系立てて捉えられるようになるものです。すると当初の気もちはおさまり、書くことの意味合いは薄れ、筆が止まってしまいます。
書くこと自体を感情の新陳代謝と見るのなら、それで終わってしまってもいいのでしょう。でも、「書きたい」の先に「本を」が多少でもチラついているならば、それではもったいない。本編を書きはじめる前に、「書こう!」とあなたを衝き動かした理由を形にしておくことをオススメします。書き殴った一行でもいい。ぐしゃぐしゃに泣いた顔のセルフィー(自分撮り)でもいい。わけもわからないことを繰り返し呟くボイスメモでもかまいません。とにかく生々しい肉声を形にしておきましょう。自分にだけ伝われば十分です。
この行動が習慣化されれば、喜怒哀楽それぞれに器を用意し、それらにおさまる「衝動メモ」をもとに、複数のエピソードを組みあげ長篇の小説に仕立てることもできるでしょう。
ふつうに暮らしている人の日常24時間のなかに、本を書く時間は割り当てられていません。また、そのための場所も用意されていないはずです。いくら「衝動メモ」を書き残したといっても、人は忘れていく生き物でもあります。少し先の将来、“いま”の感情をすっかり忘れてしまうであろう自分を現地点につなぎとめておく錨(いかり)がもう少し必要です。
・「書くために買ったんだ!」と言える道具を用意する
・1日のなかに30分程度の「創作時間」を設定する
・休日をカフェや図書館で過ごす習慣をつける
何ごとにつけ、カタチから……には賛否両論ありますが、その効力については誰もがある程度は頷くところでしょう。じっさい、新たにノートPCを買い、早朝に起きて執筆に必要な資料を漁り、夜には登場人物の相関図を描き、日曜日にPCをもってカフェや公園のベンチをハシゴしながら執筆――なんていうルーティンを数か月こなせば、気分的に作家然とするばかりか、ひとまず最初の1冊は完成を見ることでしょう。
それでも立ち止まってしまうような場合は、こんな手もあります。
・小説講座などスクールを利用してみる
・賞やコンテストといった目標を定める
・出版社にコンタクトをとってみる
創作を推し進めるための場に身を置いたり、第三者から得られる刺激やアドバイスは、内側から湧く意欲とはまた別のモチベーションを与えてくれるものです。
どんなことも継続するのは難しいものです。とりわけ「本を書く」行為は、ほとんどの場合たったひとりで進める作業です。つづけたところで、止めたところで、現実的に誰が困るわけでもありません。そんな迷いがかすめはじめたとき、
「ほんとうに、それでいいの?」
過去の自分の言葉、仕入れた道具たち、知り合った人々が、そう囁いてくれたならば、あなたの創作ライフはきっと、心強い伴走者に支えられるようにして再びゴールへ歩みはじめるに違いありません。
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