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書くために〜ピュリッツァー賞作家に教わるちょっとしたヒント〜

2016年07月06日 【作家のお話】

これまで書き方についてさまざまな角度からお話してきましたが、ここらで「執筆」という行動そのものに関する作家の生の声を聴いてみたいと思います。今回教えてくれるのはピュリッツァー賞(フィクション部門、1992年度)を受賞したジェーン・スマイリー(Jane Smiley)。彼女の作品は日本語にも翻訳されています(『大農場』中公文庫 1998年、『嘆きの年』中央公論社 1996年など)。

「小説を書く」ということについて、ジェーンがいつも心に留めているお気に入りの言葉に、ある友人の大学院内のオフィスの壁に貼ってあった「誰もあなたにその小説を書くように頼んではいない」という文言があるのだとか。つまり書くのを止めるのも、書きつづけるのも、あなた次第、自由な営為であるということ。彼女はこうも言います。たいていの小説家は、自分が熱心な読者だったから小説を書くようになるわけね。でも、ほとんどの小説は不完全なものになるの。一般的にいって、ひとつの作品のなかで“完全さ”と“創作上の飽くなき野心”を両立させることは難しいものよ。読み手目線に立てば、作品を少しでもよくするためにはどうするべきなのか、たくさんの意見や考えが出てくるわけで、当然ながらそれを作品に反映しようと試みることに。結果、作品の修正は思っていたよりも難しくも易しくもあると気づくの。

つまりジェーンが言うのは、愛読者ゆえに小さな改善案が無限に出てきて、そのそれぞれは容易に修正できるが、その数がゆえに改稿はエンドレスになる、ということでしょうか。小説をある程度書き込んできた方なら、深く頷くコメントなのではないでしょうか。このトラブルの最果てに、“はじめの一行も書けないスランプ”という恐ろしい症状が待っているのかもしれません。そこでジェーンは、私たちに5つのポイントを教えてくれています。

1.ウサギになるな、カメになれ!

身のまわりで起きている出来事に、絶えず注意を向けつづけること。それに充分な時間を割いていれば、人は多くのことを学ぶものです。それにアートには下書きがつきもの。作品が作品として成立する前段階において、下書きは最初の重要な実地調査になります。そしてその調査は、作品の造形に入る前に終らせなければなりません。とにもかくにも、第一稿(草稿)を書きあげてしまわねば、何もはじまらないのです。

2.たくさん読む

読むことで、意図せずともそこから得るものや知識はたくさんあります。本を読んでものごとに精通したり、またそうした時間を愉しんだりすることは、安堵感をもたらします。また、他の作者による小説を読んでみると、自分の作品がどうあるべきか、逆にどうあってはならないか、そんなモデルを見つけられるものです。いっぽう異なるジャンルの作品に接してみると、その対比から、小説のアイデアも具体的に浮かびあがってくるものです。そしてどんな主題をもつ作品も、それなりの調べものを伴うものですから、あなた自身のアイデアを活性化させることにもつながります。

3.見て、聞いて

他人をよく観察したり、盗み聞きしたり、ちょっとばかばかしいと思えるような“無邪気な”質問をすることを躊躇ってはいけません。彼らからは、それぞれ個人個人の立ち居振る舞い方を貪欲に学びましょう。小説とは現実社会の上にこそ育つものであり、また作中の登場人物たちは人間の多様性を見習うことが必要です。品行方正な態度を保ちつつ、人間の多様性を学ぶことはできないものなのです。

4.自前のアイデアをすべて注ぎ込んでから

作品に対するあなた自身の思い入れは、ほかの誰かに語る前に、作品そのものにすべて注ぎ込んでおきましょう。書いている途中で周囲の反応に気を取られていると、結局、自分なりのコンセプトから遠ざかってしまうもの。だから、他の人の考えを取り入れる前に、あなた自身の発想をフルに発動させる必要があるわけね。他者の反応は、作品をより進化させるための情報としてあとで取り込めばいいのです。いくつかの下書きができあがり、制作過程の長い時間のなかで、主題に取り組むための自前の能力もいよいよ枯渇してきたとします。結果に、あなたは満足しているかもしれませんし、満足できていないかもしれません。満足できないならば、他者の意見はあなたの作品をより磨きあげるために活きてくるでしょう。自身満足できるならば、他者の見立ては、作品の読みやすさや手に取りやすさを物語ってくれるかもしれません。

5.創作過程を楽しむことを意識して

たられば的な見返りを求める気もちを排除して、創作過程をこそ楽しんでみましょう。過程を楽しむことができれば結果もハッピー。結果も出ていないのに先まわりして、得られるものばかりを気にしているようではアンハッピーというわけです。

結局、誰かに頼まれているわけじゃないけれど、あなたは好きなように小説を書いていいのだし、きっと書けるはず。Good luck to you!

※この記事は海外サイト『Publishers Weekly』(2014年10月3日付)の一部補足を含む抄訳となります。

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